いよいよ看護師国家試験
さて、こうなるとあと残すは国家試験のみである。言ってみれば、看護学生にとって大本命の試験である。とにかく、緊張の試験が目前にきた。 私もいつまでも保健師学校の合格に、浮かれてばかりいられない。頭を切り替えて勉強しなければならなかった。
私は国家試験のための勉強は、とにかく過去問を中心に勉強した。先生たちは、基本は教科書と言うが、教科書を全部読む暇なんてこの時期になってあるわけがない。確かに基礎知識は必要だが、それは今までの勉強がものをいうと思う。
というわけで、私はとにかく過去問をやり、少しでも疑問に感じることがあると、必ず教科書やその他の文献に戻り知識を増やす、という勉強をした。こうすることによって、少しひねった問題が出ても対応できるようにしたのだ。
看護師の国家試験は今、年々難しくなってきているらしい。私が受けた時の勉強方法では、もう通用しないのかもしれない。過去問をやっただけでは解けないようなひねった問題が多いとも聞いた。しかも、今の国家試験には“爆弾問題”があるとも聞いた。これは、“この問題に間違ってたら、いくら他の問題が全部できていようと不合格”という地雷のような問題だ。
看護師も今や“量より質の時代”と言われている。今後私たちも資格があることに、いつまでも安穏としていられなくなっていくのかもしれない。
さて、2月26日、いよいよ国家試験当日となった。この日、私は朝から緊張していた。
私たちの学校の生徒たちは、国家試験の受験会場が池袋にある立教大学だった。私は朝早めに会場に向かった。池袋の駅からは、ものすごい数の受験生が立教大学に向かっている。みんな看護師の国家試験を受ける人たちだ。
そして、いよいよテストは始まった。1日かけてテストは続く。テストはマークシート方式なので、塗りつぶすところを間違えてはいけない、と細心の注意を払った。
テストのできはというと、あんなに勉強したにも関わらず、迷った問題がかなり沢山あり、がっかりしてしまった。もっと自信を持って答えられると思っていたのに、終わった時には、不安でいっぱいになっていたのだ。帰り道、一緒に受けに行った友達と話しているうちに、どんどん不安は大きくなった。そこで、友達3人で自棄酒を飲んで帰り、もうどうにもならない国家試験のことは忘れるようにした。
次の日学校に全員集められた。なぜかというと、全員で国家試験の答え合わせをするためだ。こんなことを何も全員でやらなくてもいいのに・・・と思ったが、逆らう勇気もないので、仕方なく登校する。次の日にともなると、色々な看護系の予備校で、昨日行なわれた国家試験の解答が出始め、学校にFAXで送られてくるのだ。
しかし、国家試験を執り行っている厚生労働省からは絶対に模範解答なるものは出ない。だから、どの予備校もあくまでも自分たちの解釈で解答を出している。よって、予備校によって答えが分かれる問題もあった。
これら解答を参考に、全員で答え合わせをしていくのだ。先生が前に立ち、国家試験1問目から、「この答えは何番だと思いますか?」などと聞き、みんなが「○番だと思います」などと答えていく。答えが別れるところは、予備校の答えも参考にしながら、みんなで採点していくのだ。
これがまた、殺気立った雰囲気の中で行なわれていく。みんな自分の将来がかかっているものだから、必死なのである。答え合わせが進んでいくうちに、みんなの絶望的な悲鳴のような声が飛び交う。普段は全く授業を聞いていなかったような子も、この日に限っては、「ちょっとー!聞こえないじゃない!静かにしてよ!」などと言ったり、「今の答え、私は○番だと思います!!」なんてすごい剣幕で発言したりする。
とにかく、採点全てが終わる頃には、泣き出す子がいたり、ふてくされる子がいたり、なんとも険悪な雰囲気となってくるのである。こんなことしなきゃいいのに・・・、と思う私であった。結局、本当の解答がよくわからない問題が多く、合格発表まで受かっているかどうかなんて、誰にもわからないのだ。やるだけのことはやったんだんだし、1ヶ月以上先の合格発表まで、このことは忘れるに限ると思った。
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