看護師になろうと思ったきっかけ2
こうして、私は自分の人生についても考えるようになった。今まで若かったこともあり、自分は薄っぺらな楽しみやいわゆる人並みな幸せばかりを追求していたような気がしてきた。しかし、色々な人の本を読んでいるうちに、人生それだけではないような気がしてきたのだ。もっと違う人生を送りたくなっていた。もっと、自分のやりたいことを一生懸命やり、輝いているような人生を生きたくなってきたのだ。
自己啓発本などを読んでいると、自分の好きなことをやって生きている人は、とても楽しそうであり輝いているような気がした。果たして今の自分は輝いているだろうか。私は、確かに今の職場環境には恵まれている。毎月きちんとお給料ももらい、所長にも信頼してもらい仕事を任せてもらっている。人間関係にもやりがいにも申し分はない。とても安定している。でも、これは私が心のそこからやりたいことではない、という思いが出てきたのであった。
そんな時、昔からの親友みーちゃんが私にある話をしてくれた。実は私は、高校生の頃から憧れていたことがあった。それは青年海外協力隊に行く、ということだった。でも、大学も卒業してしまい、就職もしてしまった。もうほとんどあきらめていた夢だ。でも、昔から日本を飛び出してみたい、という夢を持っていた私は、大学のころから就職してもずっと英会話だけは続けていた。旅行も含めて、いつ海外に行くことになってもいいように、という思いがあったからだ。みーちゃんも海外協力隊に興味があり、近くで開かれた説明会に行って来たのだという。
実際行動に移したみーちゃんを、私はすごいと思った。私は行きたいといいながらも、一度も説明会に行くこともなかったからだ。話を聞くと、ボランティアと言えども、けっこう競争率が高いということだった。しかも、何か専門的な技術を持っていないと非常に厳しいという現実であった。みーちゃんいわく「看護婦さんとかはやっぱり有利らしいよ」とのこと。“あ〜ぁ、やっぱりここでも手に職か。妹はいいなー、こういうとこでも使えて”と心底羨ましく思ったものである。しかし、私はこの時点では、それでは自分が看護師になろう、とは全く考えもしなかったのだ。
またある時、ある自然治癒力について書かれた本にとても感動したことがあった。しかし、その本はちょっと専門的で、素人の私には難しい部分もあった。その時も思ったのである。“医療を専門的に勉強した妹なら、もっと理解できるのかもしれない”と。やはりここでも妹を羨ましく思った。しかし、やはりこの時点でもだからといって私が看護師になろう、という発想には至らなかった。
そんなこんなで月日は流れていった。表面上自分でも気づかなかったが、このような事柄や色々な本に影響を受けていた私の中で、一つ一つの要素が料理の材料のように放り込まれ、静かにふつふつと私の本当の思いとして育ち、人生の契機になる瞬間を待っていたのだと思う。
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